◇はじめに
みなさんは光合成菌(こうごうせいきん)を知っていますか。光合成なら知っているが、光合成菌なんて知らないという方がほとんどでしょう。
植物が太陽の光を使い、二酸化炭素を還元して糖やアンモニアにする
地球上でおきている最大のエネルギー反応がこの光合成であり、それに大きく貢献しているのが光合成菌なのです。
光合成は効率がよくクリーンなエネルギー源でもあり、今問題になっている環境保護や省資源化などに有効です。この光合成を行う微生物が光合成菌で、これを人為的にコントロールすることで地球環境の悪化さえも解決可能なのです。
ゴミなどの悪臭を取り除いたり、化学肥料・農薬の使用を減らす。みかんの味をよくする、たまごを良質のものにするなど、私たちの身近な部分から光合成菌の恩恵を得ることもできます。
最初に歴史をふりかえり、光合成菌が何をしてきたのか追ってみました。
次に光合成菌の仕組みや働きを説明してみます。微生物について広く一般的に捉えています。
一例として”にわとり”と光合成菌の関係を取り上げました。
そして各種多方面で活躍する光合成菌を紹介します。
◇光合成菌は地球を変えた
酸素の出現
光合成というと森林や植物だけが営んでいるように思いこみがちだが、
地球に酸素を発生させた光合成微生物の存在を無視することはできない。 このページのトップへ↑
太古の地球は気温も3〜4度高く、炭酸ガス濃度も30〜40倍で
あった。またオゾン層も十分に発達していなくて、地球のいたると
ころに炭化水素、硫化物、塩化物などが多量に存在し、人間などは
とても住めない状況であった。今の公害のなれのはてと一緒の状況
↓
光合成菌により酸素が発生
↓
酸素は海に溶けていた多量の金属などの有害物質を沈澱させた。
また、酸素ガスは上空に昇ってオゾンとなり、強烈な紫外線を吸収、
生物が陸上でより効果的な活動が可能となったのである。
陸地では植物が光合成の主役となったが、微生物の働きが
あってこそ物質の循環が起こり植物が生きていける。
↓
微生物は植物の再生産のため、植物が光合成でつくった有機物を
分解・増殖させ、分解産物を無機質として放出する。
◇光合成菌とは
まず予備知識として微生物全般について説明しましょう。
i) 微生物の種類
微生物がえさとするものにより大別できる
・無機質
・ 光
・有機質
微生物の性質による分類
好気性微生物 嫌気性微生物
酸素が必要な微生物 地球に酸素がないときに生まれた このページのトップへ↑
(酸素が必要ない)
条件的嫌気性微生物 - 酸素がなければ発酵系で生活し 、
酸素があれば呼吸系で生活する
ii) 微生物はどうやってエネルギーを確保するか
微生物はエネルギーを獲得するのに無機物・光・有機物を使う。
エネルギーはATP(アデノシン三リン酸)に蓄えられ、ATPのリン酸が1つはずれてADP(アデノシン二リン酸)になるとき、多量のエネルギーが放出される。
↓
このエネルギーをいろいろな
酵素反応や運動に利用
栄養分の獲得は細胞成分を合成
させ、細胞を成長させるのに必要
細胞成分=(有機物) 炭素原子が2つ以上結合した炭素の骨格に、水素・酸 素・窒素・リンなどが結合したもの
人間の場合
食品(有機物)の成分にある炭素骨格を、
いったん糖やアミノ酸に消化して利用
微生物の場合(無機物や光がエネルギー源のもの)
二酸化炭素から炭素骨格を合成している。 【例】 CO2 → CにH,O,N,Pなどを結合したり、組み換えたりして、
糖・アミノ酸・脂肪・ビタミンなどをつくる。
現在の土壌微生物の95%以上は、基本的には人間と同様に、植物の合成した有機物からエネルギーと栄養分を獲得している。そのほうが効率がよく、植物が繁茂した後は、この種の微生物が増えた。
光をエネルギー源にする微生物
水中には光合成微生物がたくさん存在している。海での光合成は微生物が主役であり、その光合成量は地球全体の1/3〜1/2を占める。
クロロフィルという色素が光のエネルギーを吸収
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強力な還元力を持つ物質がつくられる
これからATPがつくられる
二酸化炭素や炭素ガスが還元され糖やアンモニアになる
※還元・・・相手の物質に電子または水素を与えること
強力な還元物質をつくるにはどこかで電子か水素を補給せねばならない。
以下の物質による反応で電子が発生
緑色イオウ細菌 硫化水素
水 素 → イオウ水
紅色イオウ細菌 硫化水素
水 素 → イオウ水
有機物
非イオウ紅色細菌 有機物
水 素 → 水
ラン藻 水 + 水酸イオン → 酸素
非イオウ紅色細菌(光合成菌)
嫌気的なら光合成
好気的なら光合成をせず有機物から呼吸によりエネルギーを獲得 このページのトップへ↑
光合成細菌や嫌気性の乳酸菌や抗菌性の微生物は、好気条件となったこの
地球では出番の終わった微生物であり、人間の管理なしに、自然発生的に
短期間に拡大・増殖をしえない状況にある。
↓
微生物の効果はその微生物の基質(エサ)とその基質の消化条件が合致し、
その結果が望ましい状態になった場合に発現するもので、水分条件や通気
条件、PH、気温などの条件が大きくかかわりあっており、再現性が得に
くいため
人為的にコントロールすれば多大な成果をあげることが可能
これからの社会情勢の中で地球環境の悪化を防止し、生態系を考慮した光合
成菌システムは我々にとって必要でしょう。このシステムを運営させ、向上
させる技術・管理、そしてその応用が今実現されつつあるのです。
◇”にわとり”と光合成菌
光合成菌をにわとりに与えるといろいろなメリットがあります。
まず産卵量が増えます。
◎体内の代謝能力を高めるからです。
◎鶏の病気予防−マレック病1に効果がある。病気予防のために投薬等しなくてすみます。
◎光合成菌がにわとりの体内で硝酸ガスを分解し鶏ふんも臭わなくなり、生育する環境もよくなるからです。実際に光合成菌を使っている養鶏場にいったのですが、全くと言ってよいほど臭くないのです。
◎またその鶏ふんは良質の堆肥として利用できます。
光合成菌にはビタミンやいろいろな有効物質がたくさん含まれています。
にわとりの健康を保つばかりでなく、玉子の品質も向上させるのです。
◎黄身が美しくなる−光合成菌にはカロチン系色素2が多いため
◎ビタミンA、B12、B1や各種ミネラルを多く含み滋養豊富である。
特にビタミンAは20%も増加する
◎ウラシル、プロリンなどのアミノ酸を多量に含む。
◎悪い菌の繁殖を抑え、玉子が日持ちするようになる。
◎従来の特殊卵に比べかなり低コストで生産できます。特別な装置がいらないからです。またムダとも思える特殊卵づくりの栄養管理、過剰投与はしないからです。
↓
今までの特殊卵はある特定の栄養成分を強化することを目的につくられていたのではないでしょうか。健康のことを本当に考えると、まずにわとりの健康があってこそと思います。いくらある栄養成分を加えるためとはいえ、偏った栄養摂取でそのにわとりが健康であると言えましょうか。光合成菌から話が随分それましたが、栄養成分などの機能のみをアピールして肝心なことは語られていないように感じ、ちょっとふれてみました。
1‥ウイルスの伝播で発生する。ヒトでいえばガンの様な病気。
2‥ビタミンAのもとになる
更なる光合成菌の能力 − 引用
窒素固定能力に優れる →環境保全と食糧増産
好気性有機栄養細菌と共存することによって窒素固定活性が高まる。これを食糧生産にむすびつければ、以下のメリットがある。
現在われわれは食糧生産の約50%を化学肥料等の工業的窒素固定に依存している。化石エネルギーの枯渇となれば食糧の供給が低下し、人類は食糧危機に陥ることとなる。また、化学肥料は速効性に優れる一方、その利便さゆえ多量に施用しがちである。それにより地力の低下がおこり、ひいては農薬による過剰なまでの防除で土壌は汚染されてしまっている。不健康になった土地から今さまざまな問題が起こってきている。われわれが直面しているこの問題を解決する有力な手段でもある。
冠水条件下における硫化水素などの有害物質の除去に光合成細菌は活躍。
この場合、光合成細菌の増殖が弱いと、光合成細菌の大増殖までに2〜3週間の時差が生じ、その間に有害物質によって、根の呼吸阻害、栄養代謝障害が引き起こされ、根は障害をうけてしまうことになる。→稲の多収穫技術につながる
下水の浄化に固定化光合成菌を利用
田園地帯に広がる家屋の汚水に対して浄化処理設備はほとんど設けられていない。それが流入した小川のよどんだところでは有機物を含んだ底泥(いわゆるヘドロ)が堆積し、魚貝類も生息できない状態となる。そのようなところに固定化した光合成菌を設置するとそのヘドロ中に微小プランクトンや糸ミミズ繁殖するようになり、小川は浄化され魚類が生息できる環境になる。
地方の下水処理場では、アンモニアやBOD値が放流水でも20ppm以上になり、困却しているところも多い。そのようなところに固定化光合成菌を設置する(放り込む)とそれらの値が半分以下に低下するので利用拡大が期待される。
養殖業でもウイルス性の病気の予防の他に、硫化水素を無毒の硫黄粒子にしてしまう作用で水質の劣悪化を防いでいる。えさが底にたまってできたヘドロも、量を減少させ浄化される。
また、孵化直後の仔魚の添加飼料として使用すれば、仔魚はほとんど死亡しなくなり健全に成長する。
家庭ゴミを有機液肥にする作用がある。 参考文献 小林達治著 光合成細菌で環境保全(農文協)
追加情報 「光合成微生物の機能と応用」シーエムシー出版には養鶏への具体的な利用例を著述しました。
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